なまたまご。 # Information

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真っ暗な空間の中に居た。
身体が重いのか軽いのか、何かの上に寝かされているのか浮いているのかも分からない。
ただ真っ暗な闇の中で、四肢を投げ出すように横たわっている“自分”が居た。
その自分が誰なのかも、まっくらな世界では分からない。

何故、暗いのか。
何故、暗いということを知っているのか。
それすらも分からなかった。
ただ、ひっそりと。この暗闇が晴れる瞬間はすぐそこなのだろうと思う。
俺は―、誰かを待っている。
誰かは“自分”にとって、大切で、掛け替えのない存在だ。
彼がいるから“自分”という存在があるのだと、そう漠然と覚えていた。

俺は、待っている彼を。
彼が俺に触れて微笑みかけて、愛撫して愛してくれることを。

「……」

唐突に、ふと、身体が軽くなる。
迎えに来てくれた。
ギシっと、何かが軋む音がして何かが頬に触れた。髪を掻きあげられて自分の頭部が何処にあるのか認識する。前髪をなぞられて、次第に下がっていく冷たく、けれど温かな熱は、ゆっくりと耳元へと下がる。顔を僅かに傾けられて、ようやく重く閉塞していた視界がゆっくりと開いていく。

照明など無いのに、開かれた世界は、ひどく眩しかった。
ゆっくりと瞬きをして、待ち望んでいた人物の名前が何かを考えるよりも自然に口をついて出ていた。
「……一破？」
視界が開けていくと、真っ白な天井が見えた。
照明はない。けれど、白い室内はいつも通り灯りが当たったように明るかった。
その端で、ゆらりと影が揺れる。
真っ白な長い髪。黒い眼球に、黄色の瞳が揺らめいている。
彼は、一破は穢れを知らないように白く、そして優しい瞳をしている。一見すると冷たそうな眼球の奥は酷く優しく。口元が僅かに綻んでいるのが分かった。
“黒崎一護”は、けれども訊ねるように確かめるように名前を呼んだ。
「おはよう」
一破は問いのような呼びかけに答えることはせず、当然のように薄く少し冷たい唇を瞼の上に落とした。
毎日のようにしているふれあいに、一護は今も慣れることができない。
擽ったさに瞼を閉じながら少し照れくさそうに「おはよう」と返した。
そして甘やかなふれあいが、ゆっくりと降下して自然と口元へと触れた。熱い舌が、少しだけ躊躇うようにして歯列を割り咥内へと入り込んでくる。
それをいつものように受け入れると。
舌先で咥内に入り込んでいた舌が一護の舌を探り当てて、ツンと奥を突く。
「ん……」
思わず漏れた吐息は苦しいものというよりは、この先の快感を期待してのものだった。
舌を探りあてられて、息継ぎの為に離れようとする一破の熱を追い求めるようにして、おずおずと舌を差し出す。わずかに開いた口元を更に深く重ねるようにして、舌が咥内を這っていく。
「んっんん」
「……っは」
チュプチュプと厭らしい音が口元から零れて唾液が唇の周りをベトベトに濡らしてしまう。
次第に深く深くなっていく口づけに耐えられないと、一破の頭を掴み、軽く肩を叩くと少しだけ名残惜しそうにしながらも、ゆっくりと唇が離れて行った。
「はぁ……」
思わず長い溜息のような濡れた息が零れてしまう。
身体というのは快楽に従順すぎて、一護自身を困らせる、疼いて疼いて、一破が欲しいと何処までも満たされない欲求に身体の奥が震えてしまった。



----本文一部（改訂可能性あり）-----

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　ちょっとした差だ。

　男と男、兄と弟
血のつながりがあるのか無いのか
きっと、それは人にとっては些細なことで、けれど大きな事で重要だけれど、笑い飛ばせるくらい重要ではないことで
誰かは云うのだろう
「んなの気にしてたら恋愛なんかできやしねぇよ」
　恋と愛の違いとか、んなことを訊かれても答えられやしない。
　うじうじ考えていて、例えば、回答がＹＥＳじゃなくてＮＯだった場合、手放すことはできるのか。なんて問われたら
俺はきっと、言葉を呑みこむ。
無理だ、手放せない。
泣いて嫌がったとしても、俺はきっと手放すことはできない。
　けど、あいつの望むことなら何でもしてやりたいと思う。
頭の中で反芻する問い掛けは自問自答。だから、答えなんて出やしない。……答えが出るのは怖い。
矛盾していると分かっても、両方ともが本音で、雑音で、真実だ。
例えば、これで相手が女なら、背徳心ってやつは多少薄れたんだろうか、これが例えば他人だったなら、血のつながりなんか、無かったならば、詰まらない考えはしなかったのだろうか。
そんなこと、考えた所で仕方がない。
「一破くん、君は分かりやすいね」
考えた所で無意味な話だ、だって答えを知っているのは、きっと自分の頭の中にある。
「そういうのを考えている時点で、君の答えは決まってるんだよ。壊したい、でも離したくない。大事にしたい、酷くしたい。だから、言葉を呑みこんで、何もないみたいに無表情のままになる。感情が乏しいんじゃない、表に出すことが怖いんだろう？」
正論に、言葉を呑みこむ。あぁ、この男の言葉は蛇だ。身体中に毒がのた打ち回る。涼しい顔をした男が、感情の籠らない瞳で謳う。
「それじゃあまるで、君だけが好きみたいだ、君は他の誰かを知っている、けど。彼は？　彼は君以外の誰かと深く関わったことがあるのかな、それは選択肢の無い囲いの中で君だけを与えて、その結果寄り添ってるだけみたいに思えるよ、まるでインプリンティング、選択肢の無い愛だね」
誰かを見るのが、怖い。誰かを意識するのが怖い。
誰かの想いを受け入れるのも視界に入れて考えるそぶりを見せるのも俺にとっては、酷く胸の奥が締め付けられてそのまま窒息してしまいそうになるからだ。
俺は、臆病なんだろう。好きすぎて、愛しすぎて
----本文一部（改訂可能性あり）-----